ロバート・チャルディーニは、著書『影響力の武器』の中で、アメリカ在住のウェイター、ビンセントが、このテクニックを使ってチップの稼ぎを大幅に増やすことができた話を紹介している。
通常、アメリカのウェイターは、客にできるだけ高額のメニューを注文させようとする。彼らの賃金は、レストランから決まった額をもらうのではなく、客が支払う合計金額の何パーセントかをもらうことになっているからだ。つまり客の支払う額が高ければ高いほど、賃金も上がる。
しかしビンセントは、客に図々しく高額の料理を押しつけるのがいやだった。それよりも彼は、成功に結びつくはるかに繊細な行動をとった。
注文をとるとき、彼は少し前かがみになりこう言ったのだ。
「本当のことを申しますと、お客様がお選びになったお料理は、いつもほどよい出来ではないのです。それよりも、こちらかこちらの料理をお勧めいたします」
彼が勧めた料理は、客が最初に選んだものより少し安かった。ビンセントは、自分の利益よりも客の利益を優先させたように見える。しかしまさにそのことで、彼は客の信頼を得て、たっぷりとチップを受け取った。
おまけに、料理に合うワインと一番おいしいデザートを勧めると、客はどれも注文した!もしかするとその客は、ビンセントが勧めなければ、デザートやワインをまったく注文しなかったかもしれない。
つまり、誰かを相手に何かを達成したいときには、まず先に相手の利益になることをこっそり伝えておくといい。「これから秘密を打ち明けますよ」と予告することは、まさしく同じ行為である。
これでどうすればいいかわかったと思う。でも、これは内緒にしておいてください……。
「経営」カテゴリーアーカイブ
《報告責任とは》
仕事を教える中で徹底しておきたいのが、責任の所在です。
うまくいけばいいが、失敗したら誰が責任を取るか、それが明確でないとなりません。
それには、責任という範囲の広い言葉を明確にする必要があります。責任は3つに分けられます。そしてそれぞれについて、上司・部下のどちらの責任か明確にしておきます。
① 結果責任は上司
② 遂行責任は部下
③ 報告責任は部下
これが徹底されていれば、次の通りになります。
上位から見れば、部下は決して途中で投げ出さないし、報告はきちんとするという条件付きで、結果責任は自分にある。これなら上司も納得できるでしょう。逆に、部下からすれば、自分が投げ出さずにちゃんと報告をしていれば、仮にうまくいかずとも、上司が責任を取ってくれるという安心感がある。これで、前向きに新しい案件にも取り組めます。
部下が一番嫌い恐れることは、「進めてもいいよ」と言いながら、うまくいかなかったときに「なんでそんなことをしたのか」と言い出す上司です。しかしこの原則では、そういう無責任が通せないのです。
本来は、部下が途中で投げ出したり、報告をしなかったりすることで、その仕事が失敗したとして、それは上司の責任です。こういう場合、「どうして、こいつのために私が責任を・・・・・・」と腹立たしい気持ちになりますよね。しかし、部下が「投げ出さないこと」と「報告をしっかりすること」を約束するのであれば、責任は負えるでしょう。
現実的には、「報告をしっかりすること」を守らせるのが重要です。
これが徹底さえしていれば、途中で軌道修正もできます。ちょっと頼りないと思えば、「これは任せるが、毎日の進捗状況を報告してほしい」と言えばいいのです。
どのような報告を求めるかは次に説明します。
「教え方の教科書より」
《価格の提示》
価格プランは1つではなく、複数のパターンを用意するようにしましょう。
たとえば、プランAは、基本プラン(オプションなし)。プランBは、基本プラン+オプション3個のデラックスバージョン、という具合に。
それぞれの価格を示して「どれにしますか?」と尋ねるのです。
1つしかプランがないと、最終的に判断するところで、買うか買わないかを選ぶことになってしまいます。このやり方では、買わないほうへ動く可能性が高くなります。
ユニクロが売れる理由の1つは、同じ商品のカラーバリエーションが多いからです。選択肢が多いと、どれかを選ぼうという意識が働きます。1点しかなければ買うか買わないかの判断になるので、買うのをあきらめる確立が高くなるのです。
営業でもお客様は、プランが数種類あればどれかを選ぼうという意識になるので、購入に前向きになります。
「買いますか、買いませんか」ということではなく、「買うとしたらAプランですか、Bプランですか」という話にすることで、何らかの購入に至る可能性を高めます。この手法を「ダブルバインド」といいます。ダブルバインドの手法を使うと、お客様に必要な商品・サービスをお客様が自ら選んで買うので、商品を勧められても押しつけられている感じがしなくなります。
もちろん、提案するプランはすべて実現可能なもので、なおかつお客様が必要としているものでなくてはなりません。
また、海外の面白い実験があります。
宝くじを用意し、100人の方に1枚1ドルで購入してもらいます。半数50人には適当にこちらで選んだくじを購入してもらいました。残りの50人には自分で選んだくじを購入してもらいました。その後「これから宝くじを買い戻すので、自分が持っているくじに値段をつけてください」と言ったところ、前者は平均2ドル、一方、後者の自分で選んだ人は平均9ドルの値段をつけたというデータがあります。
自分で選べば、それだけで価値が高くなるものなのです。
《難しいトップの承継》
やり直しのきかない最も難しい人事がトップの承継である。それはギャンブルであ
る。トップとしての仕事ぶりは、トップをやらせてみなければわからない。トップへの準
備は、ほとんど行ないようがない。
しかし、行なってはならないことは簡単である。やめていく人のコピーを後継にす
えてはならない。やめていく人が「かつての自分のようだ」というのならば、コピーで
しかない。コピーは弱い。
また、十八年間トップに仕え、自身で決定したことが何もないという側近も注意し
たほうがよい。自分で決定する意欲と能力のある人が、補佐役としてそれほど長く留
まることはない。さらにまた、早くから後継と目されてきた人物も避けるべきである。
そういう人は、多くの場合、成果が必要とされ、評価され、失敗もおかしうる立場に身
をおくことのなかった人である。見た目はよいかもしれないが、成果をあげる人では
ない。
では、トップの承継にあたっての前向きな方法は何か。それは仕事に焦点を合わ
せることである。これから数年、何が最も大きな仕事になるか。次に、候補者がどの
ような成果をあげてきたかを見る。こうして組織としてのニーズと候補者の実績を合
わせればよい。
P・ドラッカー(「非営利組織の経営」)より
《制約理論》
自社の強みと弱みを客観的(きゃくかんてき)に知るということは、経営(けいえい)戦略(せんりゃく)を立てる上で、非常に重要なことです。多くの企業には、業績向上に向けて、経営改善をしようとしても、常にその障害となるような、自社固有の問題点があります。それが何かを知り、その改善に向けて全力を集中させることが、最も効果的な方法であると教える「制約理論」(TOC)の考え方を本節ではご紹介します。
1.「制約条件」を発見し、集中的に改善する
「 制約理論」(TOC)はイスラエル生まれの経営改善手法(しゅほう)です。日本でも、この手法を取り入れて全社的な経営改善活動を開始している企業があり、注目を集めています。この理論が、参考になると思われるのは、各部門の視点ではなく、企業全体の収益向上を阻(はば)んでいる「制約条件」(ボトル・ネック)を探しだし、その改善に全力を集中せよと教えている点です。「変える部分(変動部分)」と「変えない部分(固定部分)」とを明確にし、「変えるべき部分(制約条件)」のみを変えるという集中改善手法は、中小企業向きといえるかもしれません。
「 仕事の手直しが多い」「クレームが多い」「整理整頓がきちんとできていない」状況では、コストも高く、社員の意識も向上するはずがありません。このような悪い企業風土を改善するだけでも、会社の業績改善に結びつくことは容易(ようい)に想像できます。
企業風土の改善は、経営改善であり、業績向上に直結します。そして企業風土(ふうど)改善のスタートは全社員の認識の一致と社長の決断がポイントです。全社員がわが社に企業風土が良くないと認識をしていても、社長のかけ声だけでは風土改善は進みません。社長が社長のやるべき仕事をきちんと行い、幹部の協力を引き出し、その上で全社員を巻き込んで改善を図(はか)っていく必要があります。
2.悪い企業風土、良い企業風土
悪い企業風土のあらわれと見られる具体的な現象をとらえて、一つひとつ改善していくことが重要です。悪い企業風土を示している現象は次ページの図表の通りです。
良い企業風土の会社には、全体に活気があり、業績も好調です。企業風土は一朝一夕の間に形成されたわけではなく、永年(えいねん)の間にできあがったものであり、企業のトップや幹部層(かんぶそう)の性格、思考スタイルなどを色濃く反映したものです。
3.企業風土は誰が作っているのか
企業風土は集団を構成する一人ひとりの総和(そうわ)でできあがっています。即(すなわ)ち企業に所属する人間が入れ替われば風土も変化します。しかし、風土形成に大きな影響力を持っているのは、社長です。
大企業でも、日産自動車の劇的な経営改善が行われた際には、トップのカルロス・ゴーン氏が見事に企業風土の改善を行ったことは、よく知られています。《色々とトラブルはありましたが》
中小(ちゅうしょう)零細(れいさい)企業(きぎょう)の場合には、トップの交代が少なく、社員の流動化も少ないために、企業風土が澱みがちであり、意識的に改善に取り組んでいかないと、沈滞ムードが蔓延(まんえん)することが少なくありません。しかし、企業風土を規定しているのはトップだけではなく、何といっても幹部を含めた全社員であり、一人ひとりの行動や姿勢が大きな影響力を持っていることを自覚して、良い企業風土を形成するように、全員が努力しましょう。
《現場を大切にする》
車を買い換えようと思い、いろいろ比較検討しています。
とある外車ディーラーで見積もりをお願いしたところ、ずいぶん待たされました。
20分くらい待たされた後、営業マンが携帯片手に現れました。「見積もりを出すために携帯から情報を送らなければならないのですが、なんか電波の入りが悪くて・・・」これは店舗での話です。
「店舗に端末置いてないんですかー?」(心からビックリした顔の私)
「何ででしょうかね。そういう現場への投資はしないみたいなんですよ・・・」(あきらめ顔のセールスマン)
業種・業界を問わず、顧客との接点たる現場が「最も大切な場所」のはずです。現場が虐げられるようなことをしてはいけません。ちなみに、ここで言う「現場」とは顧客への価値提供を直接行なっているところを指しています。単なる作業場のことではありません。
20年ほど前に、[真実の瞬間](ヤン・カールソン著、ダイヤモンド社)という本の中に「逆さまのピラミッド」というフレーズがありました。組織図を書くと、現場が最下位になることが多いが、それは間違い。顧客の接点たる現場こそ、ピラミッドの最上位にくるべきだ、というその主張は、いまも真実です。
意思決定のレベルや、組織内での影響力、仕事の複雑さ、求められる知識などの面で、「現場」のスタッフよりも管理者の職責のほうが大きいので、報酬水準が高くなるのは仕方ありません。逆に言うと、現場の方々の給与は相対的に低くなります。
しかし、だからといって、現場の人々を大切にしないことにはなりません。むしろ、低い報酬で価値を創造していただいていることに、感謝すべきとさえ思います。
現場の人たちを、単なる代替可能な安い労働力と捉えた瞬間から、自ら価値創造の源泉を傷つけていることになります。
いかに、現場の方々が生き生きと仕事ができるような環境を創り出すか、これが組織の長の役割だと思います。
《報告責任とは》
仕事を教える中で徹底しておきたいのが、責任の所在です。
うまくいけばいいが、失敗したら誰が責任を取るか、それが明確でないとなりません。
それには、責任という範囲の広い言葉を明確にする必要があります。責任は3つに分けられます。そしてそれぞれについて、上司・部下のどちらの責任か明確にしておきます。
① 結果責任は上司
② 遂行責任は部下
③ 報告責任は部下
これが徹底されていれば、次の通りになります。
上位から見れば、部下は決して途中で投げ出さないし、報告はきちんとするという条件付きで、結果責任は自分にある。これなら上司も納得できるでしょう。逆に、部下からすれば、自分が投げ出さずにちゃんと報告をしていれば、仮にうまくいかずとも、上司が責任を取ってくれるという安心感がある。これで、前向きに新しい案件にも取り組めます。
部下が一番嫌い恐れることは、「進めてもいいよ」と言いながら、うまくいかなかったときに「なんでそんなことをしたのか」と言い出す上司です。しかしこの原則では、そういう無責任が通せないのです。
本来は、部下が途中で投げ出したり、報告をしなかったりすることで、その仕事が失敗したとして、それは上司の責任です。こういう場合、「どうして、こいつのために私が責任を・・・・・・」と腹立たしい気持ちになりますよね。しかし、部下が「投げ出さないこと」と「報告をしっかりすること」を約束するのであれば、責任は負えるでしょう。
現実的には、「報告をしっかりすること」を守らせるのが重要です。
これが徹底さえしていれば、途中で軌道修正もできます。ちょっと頼りないと思えば、「これは任せるが、毎日の進捗状況を報告してほしい」と言えばいいのです。
どのような報告を求めるかは次に説明します。
「教え方の教科書より」
《性格は変えられないけど行動は変えられる》
「形から入って心に至る」が型の持っている本質
日本の武道には、型があります。「型から入って心に至る」が型の持っている本質だと思います。
企業でのトレーニングやコンサルティングの際、「性格だからしょうがない」とか「性格を変えなければいけないでしょうか?」というような意見や、質問を耳にします。
私はいつも、「性格まで考えると重いでしょう。もっと気軽に考えて、性格ではなく行動を変えてみたら」とお話ししています。ただ、行動を変えるといっても、漠然としていて、つかみどころがありませんから、まずは基本となる3つの行動だけをお勧めしています。
その3つとは、「1日のプランニング」「仕事の棚卸し」「自分へのアポイント」の3つです。
いわば、この3つは、「お仕事道」の「型」と言えるものです。それも基本中の基本の型です。
仕事の達人になるのも、武道の達人になるもの基本は同じだと思います。毎日毎日、基本(「型」)を繰り返し、意識しなくともできるようになる(習慣として身につく)。そのとき、達人への第一歩が記されるのだと思います。
タイムマネジメントに関する言葉でも「継続は力」というのがありますが、継続すべきは、基本(「型」)だと思います。
武道と違い、ビジネスの世界では、今まで「型」に該当するものがなかったように思います。だから、行動を変えようにも、変え方がわからなかったともいえます。
まずは、「1日のプランニング」「仕事の棚卸し」「自分へのアポイント」の基本を継続し、行動を変えるための「型」を身につけましょう。達人へのスタートです。
《マニュアル化》
世界の経営理論 入山章栄著より
進化理論の意図するルーティンを体現する企業は、例えば「無印良品」(MUJI)ブランドで有名な良品計画ではないだろうか。現在グローバルに躍進する同社だが、2001年に松井忠三氏が代表取締役社長に就任してからの同社の現場づくりは、まさに進化理論のルーティンを考える上での格好の材料といえる。
なかでも興味深いのは、同社のマニュアルである。良品計画のマニュアルはMUJIGRAMと呼ばれ、現場スタッフに広く浸透している。松井氏は著書の中で、MUJIGRAMについて以下のように述べる。
日本では、マニュアルという言葉にネガティブなイメージがあります。
マニュアルを使うと、決められたこと以外の仕事をできなくなる、受け身の人間を生み出す、とよく指摘されています。
無味乾燥なロボットを動かすような、画一的なイメージがあるようです。(中略)
しかし、そもそもマニュアルは社員やスタッフの行動を制限するためにつくっているのではありません。むしろ、マニュアルをつくり上げるプロセスが重要で、全社員・全スタッフで問題点を見つけて改善していく姿勢を持ってもらうのが目的なのです。
この発言は、従来の「マニュアル化」の通念を覆すものではないだろうか。良品計画では、マニュアルを本部がつくって社員に100%従わせることを、目指していない。むしろ、現場がマニュアルをたえず改訂し続けることで、「常に改善する」姿勢を組織の行動パターンとして「ルーティン化」しているのだ。
実際、同社のマニュアルづくりは現場主導で、現場と本部がコミュニケーションを取りながら、最低でも月一度は見直される。「マニュアルに完成はない」という思想だ。結果として、現場の社員はマニュアルに従いながらも、そのマニュアルに改善点がないかを常に考えながら行動するパターンを日々繰り返す。マニュアルにより行動パターンがある程度標準化されているからこそ、スタッフの認知キャパシティに余裕が生まれ、改善点を見つけられるのだ。
このように、「マニュアルを常に見直す」ことを前提にした暗黙の行動パターンがルーティン化されるとともに、形式知としてのマニュアルが蓄積され、常に現場が進化・成長を続けるのである。良品計画に限らず、トヨタ自動車、京セラ、デンソーなどいわゆる「現場が強い」と呼ばれる日本企業では「進化のためのルーティン」が醸成されている、というのが筆者の理解だ。
《リーダーシップのスタイル➂》
世界標準の経営理論・・・入山章栄著より
【シェアード・リーダーシップ】Shared Leadership:SL(2000年代~)
シェアード・リーダーシップは、我々に大胆な発想の転換を求める。従来のリーダーシップ理論は、いずれも「グループにおける特定の一人がリーダーシップを執る」という前提だった。一方でSLは、「グループの複数の人間、時(・)に(・)は(・)全員(・・)が(・)リーダーシップを執る」と考えるのだ。「リーダー→フォロワー」という「垂直的な関係」ではなく、それぞれのメンバーが時にリーダーのように振る舞って、他のメンバーに影響を与え合うという、「水平関係」のリーダーシップである。
なぜ近年になって、SLが注目され始めたのだろうか。クレイグ・ピアーズは、SLは特に「知識ビジネス産業」において極めて重要、と述べる。
いまやビジネスにおいて、新しい知を生み出すことが重要なのは言うまでもない。そして、「新しい知は、既存の知と既存の知の新しい組み合わせ」から生まれる。したがって組織内のメンバーの知の交換こそが、何よりも重要になる。
この知の交換の過程でSLが重要となる理由は、心理学の社会認識(social identity)プロセスで説明できる。あるメンバーが「自分が(その)グループに属している」という心理的アイデンティティを持てるなら、その人は他メンバーと知識を積極的に交換する心理メカニズムが働く。
しかし、もしグループのリーダーシップ関係が、従来のような垂直的なものであれば、リーダーはグループを「自分のもの」と思えても、フォロワーはそのようなアイデンティティを持ちにくい。一方で、もしグループにSLがあるなら、そのメンバー全員がリーダーとしての役割・当事者意識を持てる。すなわち、メンバー全員が「これは自分のグループである」というアイデンティティを持ちやすくなるのだ。結果として、知の交換が積極的に行われるようになる。
実際、近年の実証研究では、「従来型の垂直的リーダーシップよりも、SLの方がチーム成果を高める」という結果が多く示されている。例えば、ピアースが2002年に発表した研究がその一つだ。
この研究でピアースは、ある米自動車メーカーの、社内横断的な71の変革チーム(平均人数は7.2人)を対象とした実証研究を行った。このチームは様々な部署の人が集まって構成され、社内改革のために彼らが知恵を出し合う。まさに知識を交換し、生み出すためのチームといえる。ピアースらは、まず「各チームのリーダーシップが垂直的か、SL型か」を計測し、その6ヵ月後に各チームのパフォーマンスを計測した。すると、経営陣からの評価においても、顧客の評価においても、垂直型よりもSL型の方が、パフォーマンスが高くなったのだ。
この法則は、いまや経営学者のコンセンサスとなりつつあると言っていいかもしれない。2014年にアリゾナ州立大学のダニ・ウォンらがJAP誌に発表した論文では、SLに関する過去の42の実証研究をまとめたメタ・アナリシスを行っている。その結果、これまでの研究の一般的な傾向として、やはり①垂直的なリーダーシップよりもSLの方がチーム成果を高めやすいこと、②この傾向は特に複雑なタスクを遂行するチームにおいて強いこと、を明らかにしている。