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令和5年度 課題研究
介護現場における人材不足とリテンションマネジメント
~社会福祉法人の人的資源管理施策と離職率減少のためには~

  福島大学大学院 経済学研究科 佐藤 幸弘

【目 次】
Ⅰ 背景と目的
 1.人口の減少と少子化における労働者不足
 2.労働者の高齢化
 3.離職の問題
 4.社会福祉法人の人材確保に対する取り組み

 背景と目的

 要約でもふれたように、介護業界の課題である労働者不足を改善するために、離職をテーマに取り上げてみたいと考えているが、まずは①人口減少と少子化、②労働者の高齢化、③離職といった3つ視点から現状を見てみたい。

 3.離職の問題

 もう一つの課題は職員の離職である。「新入社員が定着しない、若手の離職が目立つ」といった声は以前から多く聞かれている。「新規学卒就職者の産業別離職状況 平成31年3月卒業者」表Ⅰ-3(平成31年3月卒業者で、平成31年3月から令和4年3月31日期間の離職者)によると、医療・福祉分野で高卒45.2%(1年あたり平均11.3%)、大卒38.6%(1年あたり平均9.65%)となっている。若年層が10年で入れ替わるということになろうか。
 筆者の顧客である宮城県の社会福祉法人では、2022年4月から2023年3月までの1年間の退職者数は20名で離職率は約10%、採用職員数は22名となっている。 

 表Ⅰ-3 新規学卒就職者の産業別離職状況 平成31年3月卒業者
             (平成31年3月~令和4年3月31日期間離職者)出典: 厚生労働省 新規学卒者の離職状況より(筆者編集)


4.
社会福祉法人の人材確保に対する取り組み

 2023年3月から4月にかけて、東北管内の社会福祉法人3カ所に「人材確保のための今後の取り組みはどのようなものですか?」といった採用に関するアンケート並びにヒヤリングを実施してみたが、
①法人独自のインターンシップ事業
②有償による職員紹介制度
③介護の魅力発信
④労働環境の整備
⑤外国人労働者の雇用
⑥退職者の再入職の強化
⑦人材紹介会社の積極的活用
⑧奨学金制度の周知⑨専門職以外の人材活用(専門職を助ける人材)
といった内容の回答がある。

 人材確保のための取り組みといった質問だったので、離職の防止の視点からの回答は無かったが、離職の防止は直接に労働者不足を回避できる法人の内部課題なので、法人が積極的に取組むことで解決することが可能であり、今後リテンション実現のための法人施策が重要課題となるだろう。

 以上、人口減少と少子化による労働者不足、労働者の高齢化、離職の問題と3つの視点で現状をみてきたが、今回の研究は離職の問題に焦点をあてて介護業界の人的資源管理における、評価制度・賃金制度・キャリア開発(教育訓練)といった法人施策と離職率(リテンション)との相関関係を調査し考察することにある。