《頑張れ》と言われたら、なんて答えますか?

 今日は、寒河江にお住まいの≪鈴木一作≫さんの作品を書き込みます。

 タイトル《頑張れ》と言われたら!

 酒田市の港南小学校で講演した折、私は児童らに『頑張れって言われたら何て答える?』と尋ねました。すると、『はい』とか『頑張ります』とか『頑張ってるよ』といった返事が元気に飛び交う中、最前列の一年生が『ありがとう』と呟いたのです。その感性の豊かさに驚くと同時に、私の脳裏には、今から20年ほど前の“A君の泣き顔”がよみがえりました。
 当時、A君も小学一年生。ぶどう膜炎という目の重篤な難病に侵され、大学病院に入院していました。両眼の失明も危惧される状況で、主治医だった私は治療に明け暮れる日々でした。
 ある日、見舞いに来た友達らが帰った後、A君は布団をかぶって泣いていました。同室の患者さんに事情を尋ねると、友達に『頑張ってね』と言われたら、彼は『これ以上、どう頑張ればいいんだ』と言い返し、泣き始めたというのです。
 無理もありません、入院してすでに3カ月。幼い身で親元から離れ、つらい治療に耐えながらも、病状は一進一退を繰り返すだけ・・・・。彼の小さな胸は、不安と恐怖でいっぱいだったのです。布団の中で泣いているA君に、私は静かに語りかけました。『「頑張れ」は、命令語じゃないんだよ』そして、『「頑張れ」というのはね、あなたの成功を、あなたの幸せを、あなたの未来を、私は信じ祈ってます・・・・・・。そういう心のこもった“祈りの言葉”なんだよ』と続けました。
 すると、それを聞いていた同室の患者さんたちが次々と『A君頑張れ!』と涙声で叫び始めたのです。ようやく布団から顔を出した彼に、私は優しく尋ねました。『自分のために祈ってくれた人に、君はどう答えるの?』
 しばらくの沈黙の後、私も彼にそっと『頑張れ』と言いました。その時、彼の口から出てきた言葉が『ありがとう』だったのです。
 そして、彼は頑張りました。半年以上に及ぶ入院生活を耐え抜き、病気は完治したのです。以来一度の再発もありません。
 彼は、その後大学を卒業し東京で立派に働いています。私は、大学病院の近くを車で通り過ぎる時、私は必ずA君の“あの時の泣き顔”を思い出し、こう呟くのです。『頑張れ』・・・・・・と。

 なんか素敵な話ですね。