《対話・会議》

 森信三・・・・修身 教授録より

 普通に対話というものは、必ず二人で話す場合をいうのであって、数人以上で話す場合、普通には座談会という言葉が使われているようです。そこでまず対話の際の心得ですが、それには、なるべく相手の人に話さすようにする。さらに進んで相手の話を聞こうとする態度が、対話の心がけの根本と言ってよいでしょう。

 つまり、なるべく聞き役にまわるということです。もちろん、全然喋らないというのも面白くありませんが、しかし自分は主として聞き役に回って、相手に何ら不快の感じをさせないというのが、対話としては上乗なるものでしょう。

 ところが、普通には、どうしてもこちらが喋りすぎるのです。ですから、自分の方から先に口を切って喋るということは、極力控えめにするんです。そうして、なるべく聞き役に回るというのが、対話の心がけとしては、一番の根本と言ってよいでしょう。

 次に、数人ないし十数人が集まって話し合う、座談会の場合の心がけについても申しておきましょう。この場合にも、ただ今申したように、『自分はなるべく喋らないようにして、できるだけ聞き役に回る』という、根本の心がけに変わりはありませんが、もう一つ大事なことは、一座のうちで誰か一人が話していたら、他の人々はそれに耳を傾けて、他のところで、また一人が喋るというようなことをしないということです。

 つまり一座のうちで、一人の人が話しかけたら、もう他の人は、自分のそばにいる人を相手に、コソコソと話したりなどしないということです。そしてこの一事が守られるか否かによって、その地域の人々の教養というか、たしなみの程度は分かると思うのです。そこで当然のことながら、特に座談会などの際には、一人であまり何回か喋らないようにして、できるだけ全員が、最低一度は話す機会がもてるようにしたいものです。