月別アーカイブ: 2012年9月

《セミナーを終えて》

 昨日は、仙台市で“医療・福祉法人”対象の人事経営セミナーを実施しておりました。講師に、宮城県柴田町にある常盤福祉会の理事長をお迎えして、1時間半にわたって御講義を頂戴しました。理事長は、現在宮城県老祉協の会長を務められており御多忙の中での講師でした。
 弊社は、常盤福祉会様とは平成19年度に給与体系の整備と人事考課制度の導入のお手伝いをさせて頂きました。現在も定期的にメンテナンスと職員研修を実施しております。

 セミナーは、人事考課制度導入に至る経緯にはじまり、御苦労した点、導入後の成果、メンテナンスの必要性等持ち時間を少し超える充実した内容でした。質疑応答にもお答え頂き実りあるセミナーになったと感じています。

 参加して頂いた方々のお話も聞くことが出来ましたが、人事考課制度の運用が上手くいっていないことを強く感じました。中には、職員の“忙しい” “やりたくない”の声に負けて、運用を中止している法人もありました。
 活力ある組織・永続する組織を目的に人事考課制度という一つのツールを使用して、その実現に向かうものであると私は考えていますが、何か他のツールによって活力ある組織・永続する組織が実現できるならば人事考課制度にこだわる必要はないと思います。しかし、単に職員・役職職員のわがままによって実施できないとすれば困ったものだと思います。頑張った人が報われることがモチベーションにも影響があるとすれば、人事考課制度により序列をつけることも必要なのではないでしょうか?
 私としては、色々と課題の見つかったセミナーになりました。

《それは妄想と錯覚》

 私たちは、相手を偏りのない目で見ているようで、実際には自分の思い込みで見ていることが多いです。

 そこで、今日は注意すべき人事考課エラーについて書きます。
【ハロー効果】 
※内 容  特に優れた点、劣った点または全体の印象に惑わされて、被考課者の個々の特性も同様に優れ、あるいは劣っていると考えること。
※対 策  ①一つ一つの特性を分離して考課すること。②イメージや印象によって考課することなく、被考課者の具体的行動を事実をとりあげること。③被考課者一人一人について、考課要素全体をつづけて考課するのではなく、考課要素一つ一つについて被考課者を変えて考課すること。

【寛大化傾向】
※内 容  考課が一般に甘くなる傾向をいう。
※対 策  ①部下に対して厳しく批判することをためらわないこと。②他の考課者の考課結果とのバランスを考慮しないこと。③成績を見分けることについての自己の考課能力を身につけ自信をもつこと。④考課の基準が低すぎないかを反省すること。

【厳格化傾向】
※内 容  考課が一般に辛くなる傾向をいう。
※対 策  寛大化傾向と表裏をなす。

【中心化傾向】
※内 容  考課が中央に集まってしまう傾向をいう。
※対 策  ①良い悪いと断定できる程度に、十分に被考課者についての具体的事実を知ること。②その他、寛大化傾向①~③に準ずる。

【論理的誤差】
※内 容  考課要素間に(例えば、積極性と責任感)一般的に密接な関係があると考える為、事実の要素へのあてはめを誤ることをいう。
※対 策  ①考課要素ごとに何を考課するのかの区別をはっきりと認識しておこなうこと。②制度上の取り決めをよく理解すること。

【対比誤差】
※内 容  自己の専門的事項について、基準が高く、非専門的事項については低くなる傾向をいう。(寛大化・厳格化傾向と深い関係がある)
※対 策  ①客観的事実をもとに、その事実の各特性を切離して考課すること。②自己を基準におかないこと。

【逆算化傾向】
※内 容  結果としての処遇、既存の社内序列を念頭に置き、総合結果から逆算して考課を行うことをいう。
※対 策  ①考課という部下の行動評定機能とその処遇とは、明確に区別して行うこと。②考課要素別の分析考課を経て、最終の総合考課を行う手順をふむこと。

《叱る、ためらう上司・親》

 読売新聞の記事から

 部下を叱らない上司、子供を叱らない親・・・・・。
 職場や家庭で“叱る”という行為が敬遠されるようになってきている。しかし、叱ることが必要な時もあるはずだ。失敗を成長につなげるような叱り方を心がけたい。
 『部下の話は、きちんと傾聴するよう厳しく言われています。かつてのように、部下をどなりつけることなんてもうありませんね』通信会社の課長は自嘲気味にそう話す。部下がミスをしたら叱るのではなく、まずは言い分を聞く。『無責任な言い訳ばかりで腹がたつこともありますが、ジッと我慢ですね。パワハラで訴えられたら大変ですから』と語る。
 日本能率協会の部下に対する接し方調査によると『どちらかといえばよく部下を叱責する』と答えた人は、5%に過ぎなかった。『叱らなくなった理由の一つがパワハラを巡るトラブルの増加』と指摘する。
 職場だけではない。子育て中の親子のマナーで気になることのアンケート調査では、最も多かったのが『子供を叱らない親』だった。明治大学教授の諸富祥彦さんは、『職場や家庭でも、褒めることがとにかく推奨され、叱り飛ばすことは厳禁、というような風潮が広がっている』と指摘する。また、『改善すべきことが有る場合には、褒めるだけの指導ではなく、きちんと叱ることも必要』と語る。
 教育評論家の親野智可等さんは、『子を思う気持ちを言葉に乗せることが大切。愛着があるからこそ、叱っている。その気持ちが相手に伝わるといい』と話す。 

《給与体系と人事考課制度》

 給与体系の設計と同時に人事考課制度を導入するケースが多いのですが、給与体系だけを整備し人事考課制度を導入しないというような場合には、組織にとってはどのようなメリット又はデメリットがあるのでしょうか?といったような質問を受けることがあります。一般的には、私が扱うケースでは給与体系をリニューアルすると同時に人事考課制度をメンテナンスしたり新たに導入するといったケースがほぼ100%になります。

 仮に人事考課制度を導入しない場合には、メリットとして考えられることは、人事考課に使う時間が節約できるということがあるかと思います。実際時々『一度人事考課制度を導入したが、現場社員から仕事が忙しくて出来ないという声が多くて止めました』と言ったことをお聞きすることがあります。このようなことも現実なのだと思います。

 一方デメリットとして考えられることは、人創り・組織創りという視点でみた場合には、能力・役割・目標といったようなことについて上司と部下が真剣に向き合って確認する場面が少なくなるということです。活力ある組織を創っていくためにはマイナスだと思います。もう一つは、頑張った人、成果を出した人が評価され、昇給・昇進・教育といった場面に適用されない、といったことがおきてきます。結果モチベーションがダウンし停滞気味の組織になってしまうといったことでしょうか!

 ミドル階層の方々には、人事考課制度の運用は労力を使うことになると思いますが、【永続する組織創り】には必要な事だと思います。未来の為に頑張ってほしいと思います。

《B・S・Cカードによる計画策定》

 経営ビジョンを設定し、実現の為の実行計画を策定するという工程がありますが、今回は少し古いのですが“バランス・スコア―カード”の考え方に基づく手法をご案内します。

 まずは、バランス・スコア―カードによる4つの視点から
 【財務の視点】財務的にどのような行動をとるべきか?株主等の利害関係者に対してどのような行動をとるべきか?

 【顧客の視点】ビジョンと財務的な事項を達成するために、どのような行動をとるべきか?顧客満足を高めるにはどのような行動を起こすべきか?

 【業務プロセスの視点】顧客と財務的な視点を満足させるためにはどのような内部体制を作り上げる必要があるのか?

 【学習と成長の視点】ビジョンを達成するために、どのようにして変化を促す人材を確保するのか?

 以上のような切り口から、結果指標とプロセス指標を設定してショートタイムチェックを繰返しながらビジョン実現に邁進するといったアプローチ方法になります。ポイントは、ある分野に偏らないということなのでしょうね!

《ヒントは現場に》

 我社の第一線で起きていることを、経営者は分かっているのだろうか。現場で起きていることがスピーディーにトップにフィードバックされているのだろうか。

 このような疑問が時々起きます。
 私は、社員の方々と個別面接を仕事で受けることが有ります。社員の方・私・会社のトップの方と通常は三人で面接を進めます。簡単なコミュニケーションシートを使用して社員の方に質問をする形で実施するのですが、時々トップが『えっ』ということが起きます。『現場でそんなことが起きているのか!』ということですが、【社員の人間関係】【お客様のクレーム】だったりします。私が、判断しても“これはマズイな”と感じるものもあります。現場とトップの距離が遠くてタイムリーにフィードバックがなされてなかったり、ミドル階層の社員のところが詰まっていたり、報告のシステムが機能していなかったりというのが原因のようですが、ある日突然【退職】【大クレーム】【事故】等というように“トラブルとして見える形の現象となってしまいます”
 
 小売業であれば、店舗に行きお客様の行動や社員の行動を観察する。工場であれば、作業者の作業方法や仕掛品の量、管理方法をチェックするなどして、現場で実際に社員の人間関係や仕事ぶりを確認することが大切だと感じます。
 
 年一回程度の個別面接も極めて有効です。