月別アーカイブ: 2013年4月

《人事考課制度》

 今回は、人事考課に対する考え方をコンパクトに整理したみたいと思います。

 まずは、人事考課制度の目的ですが【活力ある組織を創ること】としたいと思います。活力ある組織が出来るということは最終的に【組織の永続】へと繋がります。ですから人事考課制度の運用は、組織が永続する為の一つの手法であるということを確認しておきます。

 次に人事考課の考課要素ですが、大きく三つ。
※目標評価
※知識・技術の評価
※仕事への取組姿勢
 この中で、特に大切だと考えているものに【チャレンジ目標の設定】があります。M・チクセントミハイが提唱する“フロー理論”の第一番目に【適度に挑戦的な目標】が挙げられています。ピーターの法則におていも目標設定の大切さが示されています。各人が挑戦的な目標をもって仕事に臨むことは、活力ある組織の成立には欠かせないものとなります。

 また、何をどのようにして考課するのか?につていは、自己評価と上司評価のギャップを発見して、どのようにしたらそのギャップが埋まるのかを確認していく作業になります。もう少し説明すると、期待されている人材像と現状の自分とを比較して期待人材像にどのようにして近づいていくのか、そのプロセスを上司と部下で一緒に考えていくということになります。
 
 人事考課制度を運用することで、結果的に順番(S・A・B・C・D)がつきますが、序列とか順番をつけることを目的に進めるものではないと考えます。

《人間の土台》

 職場の教養四月号に“人間の土台”をテーマにした内容が掲載されていました。
 少しご案内をします。

 人間の能力には、目に見える部分と見えない隠れた部分があります。
 一般的に能力を評価する時、目に見える部分を指す場合が多いようです。それは形や数値によって判断される部分です。企業においては、技術や技能を高め、磨き、そして向上させる為の努力が求められます。
 しかしながら、ある程度までいくと、自分の能力に限界を感じることがあります。頑張っているにもかかわらず思うような結果が出ない。努力しているのに成績が伸びない。これはスポーツなどで言うところのスランプ状態です。
 ここで大事になってくるのが、目には見えない能力です。その一つが【人間力】と言われるもので、人間の土台とも言うべき精神的な部分です。
 日常に感謝する心、自己の未熟さを知って学ぼうとする謙虚な心、そして他者をいたわる思いやりの心などの形成が、人としての土台を築きあげます。
 人間の土台を強固にすることで、自己の能力は強化されていきます。今以上の更なる飛躍のためにも、人間力を高めていきましょう。

 英語で表現すれば“EQ”【感性指数・感じる知性】ということになるのでしょうね。対極にあるのが“IQ”【知能指数・考える知性】です。
 一般的には社会に出たら、IQ 20%  EQ 80% と言われます。ここで、EQの定義を確認してみましょう。
①自分の本当の気持ちを自覚し、心から納得できる決断を下す能力
②衝動を自制し、不安や怒りなどのストレスの元になる感情を制御する能力
③目標の追及に挫折したときでも、楽観思考で自分自身を励ます能力
④他人の気持ちを感じ取る能力
⑤集団の中で調和を保ち、協力し合う社会的能力

 定義を整理すると、
①他人に対する心の持ち方 
 まわりの人に思いやりの持てる人ほど、EQ型人間
②自分に対する心の持ち方
 同じことでも、前向きに考えることができるのが、EQ型人間
 EQが高いということ、すなわちそれは、社会で他人とうまくやっていけること!!
 
 土台を強化したうえで、知識・スキルの教育をしていきたいものです。

《信頼できる医師》

 『信頼できる医師に出会うまで5年』 読売新聞の記事より

 精神疾患で精神科に通う患者の43%が『信頼できる医師』にたどり着くまでに5年以上を費やしていることが、特定非営利活動法人・地域精神保健福祉機構の調査で分かった。
 調査は月刊誌『こころの元気プラス』を発行する同機構が、読者らを対象に、昨年12月から今年1月まで実施。統合失調症やうつ病などを患う男女計135人から回答を得た。
 主治医を代えた経験がある人は90%で、その回数は2、3回が33%、4、5回が29%、10回以上も8%いた。代えた理由は、50%が『治療方針に納得がいかなかったから』と答えた。
 現在の主治医を『信頼できる』と答えた患者は135人中91人。このうち20%は、出会うまでに『5年以上10年未満』を費やし、10年以上かかった患者も23%いた。信頼している現在の主治医に対しても『説明が不十分』とみる意見が多く、病気や薬の説明では、全回答者の39%が不満を感じていた。同機構編集責任者の丹羽大輔さんは『精神科医が説明をきちんとして、患者の今後の人生を考えた対応をしてくれれば、医療機関を転々としなくて済む』と話す。

 インフォームド・コンセントと言われるようになって久しいですが、現状に?です。

《意識レベルの限界》

 前回に引き続き《意識》について考えてみたいと思いますが、M・チクセントミハイが興味深いことを本に書いていますのでご紹介します。

 現在の科学は、中枢神経系がどのくらい情報を処理できるかを見積もることがようやく出来始めたところである。我々は一時にせいぜい7ビット(例えば1枚のコインによる占いの結果は1ビットの情報量)の情報・・・・・・異なる音や視覚的刺激、認知可能な情報や思考のニュアンスの差異など・・・・・しか処理できないようであり、1組のピットを他の組から区別する最短時間は18分の1秒程度らしい。この数字を使えば、最大1秒間に126ビット、1分間に7560ビット、1時間にほぼ50万ビットを処理できることになる。1日16時間起きているとすれば、70年の生涯で処理する情報量は、1850億ビットになる。
 他者が何を話しているかを理解するには毎秒40ビットの情報を処理しなければならないということは、意識には限界があるということを示している。我々の最大情報処理容量を1秒当たり126ビットと仮定すれば、同時に3人の話を理解することが可能ということになるが、それは他の全ての思考や感覚を意識から閉め出すことによってのみ可能となる。例えば話し手の表情を感知したり、話し手が言っていることについて何故そうなのかを考えたり、彼が何を着ているかに注目したりすることはできない。  M・チクセントミハイ “フロー体験”より

 聖徳太子は7人の話を同時に聞くことができたといいますけど???

《意識レベル》

 コーチングでは、《顕在意識・潜在意識》あるいは、《意識レベル・無意識レベル》のような区分の仕方で“こころ”といったものを説明します。
今日は、意識レベルについて考えてみたいと思いますが、まずは意識の4つの機能から確認していきます。
①知覚機能
 知覚は、感覚を通じて認識することです。私たちは、自分なりの解釈をベースに現実についての情報を集めています。ところが、この知覚や解釈は、必ずしも正確で完全ではありません。
②連想機能
 連想は、知覚した情報が無意識レベルに蓄積されている情報と連動して観念を呼び起こす心的作用です。全ての新しい情報は、蓄積された情報と連動します。
③評価機能
 評価は、受け入れた情報を無意識レベルに蓄積されている情報と連結して、その価値判定をすることです。私たちは、受け入れた情報が自分にどう影響するかを考えます。『その情報は、自分をどの方向に向けるのか』『今までの情報と比べてどうか』などを考えて評価します。
④決定機能
 決定は、緊急性や目標に基づいて行動を決めることです。

 例えば、あなたが車を運転していたとします。高速道路で自分が追い越したり逆に追い越されたりするたくさんの車がありますが、実際には認知していません。すぐに忘れ去られてしまいます。しかし車線の間を不安定に蛇行している車に注目することが時々あります。その普通でない車は意識の中心に入り私たちはそれを知覚します。次に蛇行している車は、無意識レベルに蓄積されている情報と結び付けられ、はたして酒酔いか・居眠りか・はたまた初心者か等々連想機能を働かせます。これは注意すべきことなのかを評価し、速度を落としたり車線を変更したりするといった決断をするということになります。
 
 私たちは、五感を通じて世の中の現実を知覚し、現実との接触を保っているのです。

 次回は、この意識レベルの限界について書いてみたいと思います。

《頑張って》

 言語心理学に興味を持っていたころ、読売新聞に基調講演の記事が載っていました。(2・3年前でしょうか!)
 少し紹介します。

 『今日は、皆さんにコーチングについてお話しさせていただきたい。コーチがつけばいい、上司がいればいいというわけではない。どういう人が、どういう指導をしたら、人は伸びるのかということに着目したのが、コーチングです。
 ヤクルトの中で四年連続で一番の売上を達成した女性マネージャーがいた。彼女にインタビューしたところ、私たちは、「頑張ってね」とか「頑張れよ」というが、彼女は言わない。「頑張ってるね」と言う。たった1字違うだけ。でも、「頑張ってね」は突き放された感じがするが、「頑張ってるね」だと、相手は、私のこと見守ってくれている、認めてくれているという印象を受けるという。』 コーチ21 代表 伊藤守 基調講演より

 今日精神科医の本を読んでいたら、《頑張って》の言葉について解説がありました。伊藤さんの話を思い出したので書いてみました。

 『頑張って』・・・・・・未来形
 『頑張っているね』・・・現在形
 『頑張ったね』・・・・・過去形
 意識して使ってみたい!!

《イノベーションのジレンマ》から

 少し古い本ですが、クリステンセン教授の “イノベーションのジレンマ”というタイトルの本を(2001年7月初版)私は最近読みました。“イノベーション”という言葉が随分と世の中で氾濫した時期もありましたけど、この本が引き金になったのかもしれません。
 本の内容は、【破壊的技術】【持続的技術】について書いてありますが、優良企業がダメになる理由についてディスクドライブの開発を例に説明をしています。関心のある方は読んでみてください。

 その本の最後にクリステンセン教授の言葉が紹介されていましたので、書いておきます。
 教授は『イノベーションのマネジメント』の講義の最終日をこう締めくくったのである。
 『私のボストン・コンサルティング・グループ時代の友人は、大きなヨットを持っていて、土日となればクルージングに出かけている。ところが彼は、やれ係留の費用が高いだの、メンテナンスを頼んでいたのにちゃんとやっていないだの、といつも不平ばかり言っていて少しも幸せそうでない。一方、私は毎週日曜日は欠かさず教会に行き、困っている人の相談に乗って、アドバイスをしたりしている。毎週日曜日が取られるのは大変だが、自分が人や地域のために役立っていることから得られる満足感でいつも満たされている。諸君もこれから社会に出て、ビジネスの場で活躍をするのだろうが、本当の幸福はお金でなく、家族やコミュニティーから得られるということを覚えておいてほしい』

《人事考課と平均以上効果》

 『平均以上効果』という現象を聞いたことがあるでしょうか!
 たとえば、『あなたは、職場の人たちの中で、自分の協調性はどれくらいの位置にいると思いますか? 平均より上? それとも下?』
という調査をしたとします。
 こうした調査では内心で思っていることをハッキリ回答しない人もいると思います。しかし正直なところを聞き出せたとすれば、『自分は平均以上に協調性がある』と考えている人は、私たちの半数を大きく上回るはずです。七割を超えてもおかしくありません。こんなに多くの人が『平均以上』ということは、現実にはありえません。ここには、客観的情報を歪めてでも、自分自身を肯定的、積極的に認識しようとするシステムが働いています。
 社会心理学者トーマス・ギロピッチは、こう述べています。一般大衆の大半は、自分が平均以上に知能が高く、平均以上に公平であり、平均以下の偏見しかもたず、そして平均以上に自動車の運転がうまいと考えている、と。
 ギロピッチによれば、アメリカの高校生に行った調査では70%が自分の指導力を平均以上と考えており、平均以下と答えたのはわずか2%にすぎません。他人とうまくやっていく能力に至っては、ほとんどすべての高校生が自分は平均以上であると考えており、上位10%以内に入ると考えている高校生は60%もいたのです。大学教授を対象とした調査では、その94%が、自分が同僚よりも有能だと考えていました。
 これを人事考課との関係でみると、『自己評価』と『他者評価』とのギャップを埋めていくプロセスは、大変重要な作業であるということであり、『つもりの自分』を他者からのフィードバックによって、『はた目の自分』として客観的に捉える事は、人事考課制度の大切な一面であると考えます。
 自己評価が高めになる傾向にたいして、他人という鏡に映る自分を冷静に見つめることも時には必要かもしれません。