業務案内

1.給与体系の改善事業(制度設計)

2.人事考課制度の提案(制度改善)

3.人材と組織の活性化事業(教育研修)

4.経営システム研究室が提供する経営計画の策定

5.行政書士業

 

令和5年度 課題研究
介護現場における人材不足とリテンションマネジメント
~社会福祉法人の人的資源管理施策と離職率減少のためには~

  福島大学大学院 経済学研究科 佐藤 幸弘

【目 次】

Ⅱ 先行研究
1. 人的資源管理とリテンション
2.社会福祉法人に多い賃金制度の現状

 2 社会福祉法人に多い賃金制度の現状

 (1)年功給
  1)特 徴

① 基本給は、学歴別、男女別に決定され、年齢加算、勤続加算がなされる。
② 賃金相場による水準調整が任意にできる。
③ 日給から日給月給への移行が容易にできる。

  2)問題点

① 能力給、仕事給としての理論体系がない。
② 定昇、ベア[1]が不明確である。
③ モデル賃金が描けない。
 (描けても、単なる年功加算の足し算加給にすぎない。)
④ 成績評価の累積(軌跡)が説明できない。
⑤ 中高年齢者の賃金が年齢勤続により直線的に上昇し、人件費負担が過大とる。
⑥ 退職金が昇給により無限に増大する。
⑦ 普通のケースで、30代以降年齢勤続の伸びと能力の伸びが比例せず、この年功給では、賃金カーブと能力カーブが乖離する。

    勤続≠能力アップ
    年齢≠能力アップ

(2)併存型職能給(第2グループ)

 1)特 徴

① 基本給は、年齢給、勤続給、職能給[2]の構成を持ち、職能給の割合は任意に設定される。
② 職能給部分は、号数の昇号加算と、昇格昇給幅をもつ。
③ 退職金の高騰対策として、第2基本給またはポイント式退職金[3]をもつ。

 2)問題点

① 年齢給、勤続給、職能給が便宜的で設定根拠がない。
② 年齢給=最低生計費の仮説は、制度導入時点のみで、その後は根拠を失う。
③ 各等級に設けた上限賃金が機能せず、上限賃金にかかると昇格させてしまう運営に陥るケースが多い。(成績評価と昇格管理が甘く、多くが年功システム化してしまった。)
④ 退職金が昇給により無限に増大し、人件費負担が過大となる。(年功給と同じ弊害)
⑤ 月例給中心の体系で、賞与の合理的配分ルールをもたない。
⑥ 近年、年功是正のため年俸制移行を提唱しているが、運用ルールが明示できていない。諸手当を業績手当や役割給に統合することにより、業績連動型給与として、改善を進める事例がふえている。

[1] ベアとは、基本給のベースアップのことで春の定期昇給時に定額加給・定率加給といったように基本給部分が底上げされること。

[2] 職能給は職務遂行能力を定期的に評価して給与に反映させる部分。

[3] ポイント式退職金とは、毎年人事考課等の結果を退職ポイントに置き換えて累積し、退職時にその累積されたポイントを金額に換算して支給すること。