《年の功》

 まずはこんなエピソードから

 私の妻の両親で、当時七〇歳だったハワードとジゼルは、ワシントンDCの地下鉄の駅から外に出たところで猛烈な吹雪に見舞われ立ち往生していました。二人はその日の夜、私たちの家で夕食をすることになっていました。駅から我が家まで歩くには遠すぎるのでタクシーを拾いたかったのですが、ラッシュアワーのため、まったくつかまりません。ハワードはクルマで迎えに来てほしいと電話をかけてきましたが、あいにく私も妻も渋滞に巻き込まれ、自宅にたどり着けないでいました。

 寒さで指がかじかんできた頃 ハワードは通りの向こうに湯気で窓を曇らせたピザ屋があることに気が付きました。彼は妻と積もった雪に足を取られながらやっとの思いで店に入り、カウンターでピザの宅配を注文しました。店員から宅配先を尋ねられたハワードは住所を告げて、こう付け加えました。

 『もうひとつ、お願いがあるんだけど・・・・』

 『なんでしょうか!』と店員が答えると、彼はこう言ったのです。

 『私たちもピザと一緒に宅配してもらえないかな!』

 そして、二人はその晩の夕食となるピザを抱えて我が家に到着しました。

 最近、脳について書かれている本を続けて読んでいますが、私たちの脳は、それまでの人生経験から編み出された様々な方法が蓄積されていて独創的な解決策を思いつくのですね。

 『いくつになっても、脳は若返る』素敵な言葉です。