《改革・改善》

 大山泰弘様(日本理化学工業会長)の記事より

 『多くの障害者を雇用出来ているのは、扱う商品がチョークだからだろう・・・・。』知的障害者の雇用を本格化させた頃、こんな心ない言葉を投げかけられることが増えました。1970年代半ばのことです。

 当時若かったせいもあるのでしょう。こう言われることが悔しくて仕方がありませんでした。『チョーク以外でも出来ることを証明しよう』と思いました。

 そこで、音響メーカーに頼み込み、カセットテープの組み立ての仕事を回してもらいました。カセットの中に五つの部品をセットする仕事でした。ある大手メーカーでは、一人当り1日に約1000個組み立てているようでした。最初はこれを目標にしました。

 ところが、甘くはありませんでした。メーカーと同様に、一人で五つの部品をセットする工程を組んでみたのですが、一人当り200~300個程度しか出来ません。一人で行う作業工程が多く、障害者を戸惑わせてしまったようでした。

 あれこれ考えた結果、5人で作業を手分けすることにしました。一人が1つの部品をセットするのです。一人がA部品を次の一人がB部品を、といった具合です。すると、5人で5000個を組み立てることが出来ました。一人当りにすれば、大手メーカーと同じ生産量です。しかも、不良品を出す割合は我々の方が少なく、良い成績でした。

 工程を単純化、細分化したことで、目の前の一つの作業に集中出来たからでしょう。重度の障害者でも、働く人に合わせて工程を工夫すれば、十分に企業の戦力になる。今もその思いに変わりはありません。