《人使いの名人》

 いつの時代も人事については頭を悩ませていたことが窺がえます。

 戦国時代『人使いの名人』との呼び名が高い“蒲生氏郷”の逸話をご紹介します。

 彼の座右の銘に(現代風に表現すると) 
『給与ばかりいくら多くしても部下は喜ばない。部下が功績を立てたときは知行(給与)を多く与え、負け戦のときは給与ではなく逆に愛情を注ぐべき』とあります。

 彼の自宅には【蒲生風呂】と呼ばれるものがありました。それは、彼がまだそれほど大きな大名でなかったころ、部下が次々と功績を立てても給与でこれに報いることが出来なかったのです。そのため彼は手柄を立てた部下を自分の家に呼んでは風呂を沸かして酒を飲ませました。風呂は自分が薪を焚いて沸かしました。

 そのために風呂に入った部下は感動し、このことが他の者たちにも伝わって、『おれも蒲生風呂に入れるような手柄を立てよう』と奮い立ったといいます。

 こういうことは思いつきでただやればいいということではありませんが、見事な人事管理と動機づけだと感じました。