《未来の年表から》

 昨年出版された“未来の年表” 河合雅司著 は、いろんな意味で刺激的な本でした。内容は、統計を使用して将来の日本の人口や高齢者の構成比を予測したもので、たくさんの指標があります。その中の興味深いデータが

 【2026年・認知症患者700万人規模に】といったものです。

 内閣府の『高齢社会白書』(2017年)は、認知症の有病率が上昇した場合、団塊世代が75歳以上となる2025年に730万人で65歳以上の5人に1人、2060年には1154万人で、3人に1人になると推計している。

 従前は、痴呆症とかボケ老人とか呼ばれましたが『認知症』と言われるようになって10年以上が経過しました。

 年末年始に読んだ“希望の人々” 生井久美子著 から

 1994年2月、雪深い秋田の『痴呆病棟』。
 介護の現場でお年寄りに最も近い、付き添い婦さんの手伝いをさせてもらい、病室の床に一緒に寝泊まりしながら取材をした。24時間ぶっ通しの仕事だ。枕元に尿瓶が並び、ゴキブリが這う。いのちにかかわる深い仕事ををする人たちがこんな待遇しか受けていなかった。
 『地獄は死ぬ前にあるんだなーって思うよ。患者も私たちも』年配の付添い婦さんのしゃがれた声が、今も耳に残る。
 動くと危ないという理由でベッドや車椅子に縛られる人もいた。その惨状に立ち尽くし吠えるように泣いたこともあった。
 あるとき、付き添い婦の松本さんは、入所者の二郎さんが病棟を徘徊する理由は【苗をまく行為】だと気が付いた。何度も笑顔で話しかけ、一緒に歩き回ること2か月、二郎さんの険しかった顔が穏やかになった。4か月後、唸るだけだった二郎さんに言葉が戻り、ある朝『世話に、なるなぁ』といった。本人の視点に立って接すれば『絶望的』と専門医に見放された人も変わる。

※介護現場の人手不足問題に一石を投げかけるような大きなテーマです。時間と人手の問題で出来ること・我慢していただくことの検討の時期に入っているのだと感じます。ただ、常に“それでも何が出来るのか!”を意識して業務にあたりたいものです。