《集団の選択》

 読売新聞の“編集手帳”より

 迎える宴会シーズンの余興に加えてもいいかもしれない。

 コインでもあめ玉でもガラス瓶いっぱいに詰め込み、一番近い数を言い当てた人が賞品として受け取れるとする。

 誰が当てるかは時の運だが、確実に正解に近づく方法ならある。まず、個々の参加者が周囲に惑わされず、一人で答えを考える。次に答えを持ち寄って平均すると、個々の答えのバラツキにかかわらず、ほぼ必勝と言える精度に至る。・・・・・物理学者レン・フィッシャー氏の“群れはなぜ同じ方向を目指すのか?”にあった。

 正解のある問題で、ガラス瓶で言えば重さや見た目といった相応の情報がもたらされる場合には、個々の考えを集めた『集団の選択』に間違いはないという。

 仏ルイ16世の革命裁判でも、公正な審理を求めた数学者が、独立した陪審員による多数決を提案した。それは退けられたが、集団の選択を社会にどう反映させるかは、今も変わらぬ難題だ。

 英国の国民投票や、米大統領選の後だけに強く思う。瓶の中身のような正解はなくとも、まずは周囲に惑わされず、相応の情報を集めてじっくり考えることから始めたい。