《指示待ち症候群》

 少し古いが、朝日新聞に掲載された65歳の女性からの投稿である。

 ざん新なコスチュームに身を包み、街角でたばこの新製品を配っていた若い娘さん。
 杖をついて歩いていた夫に手渡そうとして『失礼ですが、二十歳を過ぎていらっしゃいますか』
 夫は75歳です。

 この情景にはいくつかの見方があると思う。私が見たものは、若い彼女の『忠実』ぶりであった。新聞にも『マニュアル』という見出しがついていた。法に触れることを恐れて、その確認は厳しく指示されていたにちがいない。彼女は指示通り正確に動いているわけだ。
 最近、コンビニでも同じような事が行われているようです。

 もう一つ似たような投稿を紹介します。

 ピカピカの新車が納車された。さっそくガソリンスタンドへ給油に行ったら、元気のいい女の子が
『いらっしゃいませ! 満タンですか』 『ハイ』すると今度は
『洗車はいかがですか!』
 私がこれに見るものは、やはり彼女の忠実ぶり、他から言われたその通りに動くということである。
 言われるとその通りに動く人、与えられた条件の枠内でだけ動く人が多くなる一方で、それを越えて何とかしよう、そこから脱出せねばと動く人はがぜん少なくなってきているようだ。
   
 “人を人として” 藤田英夫著より