《もつれた心ほぐします》

 読売新聞の人生相談で、精神科医の野村総一郎さんが時々回答を出しています。なかなかの回答に思わずうなることもありますが、一冊の本にしたものが出版されていますので、今日は一つご紹介します。

【いじめられ退職、悔しい】・・・・・仕返しをしたくなる自分が嫌に
 40代女性。2年前、職場でいじめに遭い、10年間勤めていた仕事をやめました。そのことは家族にも話し、理解してもらっています。新しい仕事も見つかり、同僚にも恵まれています。友人もおり、家庭内にも問題はなく、今は充実した生活を送っています。
 ところが、いじめられた記憶がいまだに残っているのです。時がたてば忘れられるだろうと思っていたのに、憎しみは増すばかりです。
 当時私をいじめた女性は不倫をしていました。相手の男性が私にも言い寄ったことを知り嫉妬したようです。もちろん私はその男性とは何もありません。事情が事情だけに私は上司に説明できませんでした。逆に悪者にされ退職しました。そのことを思い出すと悲しくなり、女性に仕返ししたくなるのです。そんな自分が嫌になります。   (東京・L子)

【アドバイス】・・・・・・あなたの対応は正しかった。過去にこだわっては損するだけ
 これは悔しいですね、いじめの内容が詳しく書いてあるわけではないんですが、それでも、読んでいる私も悔しくなって、『なんてひきょうな!』と思わず叫んでしまったほどです。何しろ10年も勤めていた仕事を不当な理由で辞めざるをえなかったんですからね。
 ただその一方で、この時のあなたの対応はなかなか良かったようにも思えます。もしあなたが弁舌さわやかに相手の不倫や嫉妬心のことを述べてたらどうなったか?これは証拠立てることが難しいし、おそらく仕事に直接関係しない事柄だけに、あなたの方が卑劣の誹りを受け、相手はさらにひどい手を使ってあなたを攻撃したかもしれない。仕事を辞めたのは確かに不当で残念な事ですが、現在の職場や家庭の充実を考えると、それすらも結果論としては悪くなかったんです。
 多くの人が心に忘れられないトラウマ(精神的外傷)を抱えているものです。それが現在に直接影を落としていないとすれば、やはり現実生活でそのことにこだわっては損をするだけです。トラウマを忘れる為には何らかの象徴的な、ある種の儀式的行動が必要とも言われます。この欄への投稿自体がそのような役割を果たせたらすごくうれしいです。

 最近は、70代の年配の方々の投稿が結構ありますね。