《人事考課・指定席と既得権》

 【評価はいつも同じです】
 社員サイドの会社批判や上司批判とは反対に、会社幹部に社員の評価を尋ねると『成績評価はいつも同じですよ。良い者はいつも良いし、ダメな者はいつもダメですよ』と言われる。多くの会社で同様で似たような話がよく出てくる。考課者訓練でお伺いしても、皆さん同様に感じているようだ。
 成績評価の弊害として、一番心配されるのがこれである。いつも、成績の良いAクラスの者のグループが固定され、これが『上司からの覚えが良い連中』と映り、一方でワンランク落ちるCクラスのグループが固定され、これが『覚えの悪い連中』と映っているとするならば、大変である。
 Aクラスの『上司の覚えの良い』方は、多少の失敗や成績ダウンがあったとしても、【今回もまたA評価をもらえるはずだ】と《既得権意識》を持つようになり、上司も評価を下げるとやる気をなくしたり、ヘタをして退社といったことも困るのでA評価を続けることになる。
 Cクラスの『覚えの悪い』方は、【どうせ少々頑張っても評価が変わるはずがない】と思い込み、半分あきらめ気味ですし、上司の方もつけにくいC・Dの評価は、今までの実績のあるメンバーのほうが心理的にもつけやすいので、徐々に《指定席》が固まってくる。
 成績評価にシード権はないですし、終身A会員もありません。毎期毎期ご破算でその期の実績に応じて評価してもらいたいし、実力主義給与体系での昇格に際しては、一度標準に戻してから改めて上位等級での基準がBかAか、あるいはCなのかを判断して頂きたい。
 入れ替えのない世界は面白くないし、入れ替わりのチャンスがあると思うから頑張れるのです。係長でAだった者が課長クラスに昇格してBになったとしても当たり前な話で、それでも上出来である。
 『実力給と業績年俸制のすすめ』より