《編集手帳》読売新聞より

 どこかの学校の国語テストで、こんな珍解答が教師をうならせた。
 
 問題は《 用意◇◇ 》 ◇◇に『ドン』と記入した学生がいたらしい。・・・新ことばのくずかご 筑摩書房

 正答は、もちろん『周到』である。久しぶりに同書をめくったものの、最近の生活事情や経済の不安を思えば、いたたまれなくなる。

 【周 到】・・・手落ちのないこと(広辞苑)。収入減に苦しむ人々が政府に求めたものは、間違いなきようにと難しい仕組みを作ることではなかったろう。

 感染症の拡大対策で、シンプルな『国民一律10万円』に変更された現金給付案である。

 スピード重視と言いながら、そうは見えなかった政府には大いに反省してもらいたい。現金給付は希望者が自治体に申請し、個人口座に振込む方式が検討されている。

 とはいえ、市町村には大変な事務負担がのしかかる。迅速な支給の実現に向けては、手続きをできるだけ簡略化することが欠かせないだろう。

 緊急事態宣言が全国に拡大された。地域により状況は異なるとしても、先手とスピードが大事なのはこれまでの攻防から思い知るところである。

 改めて、用意ドンだ。